キャンプ用ガスカートリッジの基礎知識 状況によってガス成分を使い分けよう!
キャンプや登山をはじめ、災害や緊急時など様々なシーンで気軽に便利に利用でき、ビギナーからベテランまで幅広いユーザーの活動を支えるガスカートリッジ。その手軽さから詳しいことを知らなくても便利に使える反面、誤った使い方により思わぬ事故やトラブルを招く場合もあります。
だからこそ知っておきたい、ガスカートリッジのキホン。
アウトドアでよく使用されるOD缶を中心にガスカートリッジについてまとめました。
この記事の内容
カートリッジの形状は大きく分けて2種類
アウトドアで一般的に用いられるカートリッジは大きく分けてCB缶とOD缶の2種類の形状があります。
CB缶
CB缶は家庭用のカセットコントなどに用いられる見慣れた形状のもの。
CBとはカセットボンベ(CassetteBonbe)の頭文字。
OD缶
一方、OD缶は調理用のバーナーやガスランタンなどでよく利用され、OD缶向けのガス器具のほうが種類が多くバーナーヘッドの選択の幅も広いです。
お気づきの通りODはアウトドア(OutDoor)の頭文字です。
ガスの特徴
あまり知られていませんが、本来ガスは無色無臭、そして無毒です。
じつはガス臭い匂いって後付けだったんです。仮に吸ってしまっても人体に悪影響はありません。
ですが、ガス漏れが発生した際にガスを吸引してしまい酸素が吸えなくなると窒息する恐れや、充満したガスに引火して火災になる恐れがあります。
そのため、ガス漏れをいち早く察知できるようにあえてあの独特な匂いをつけています。
液化ガスが気体になると、その体積は約250倍に膨れ上がります。
テント内などのせまい空間で液化ガスを多量にこぼしたりした際は、膨張したガスにより室内の酸素が追い出され、窒息する恐れがあります。
万が一、ガス漏れが発生したら引火だけでなく、窒息の危険性もあることを覚えておきましょう。
ガスの成分
同じメーカーのガスでも2~3種類のグレードが存在します。
これはガス成分の配合を変えて低い気温でも使用できるようにするためなんです。
基本的にはブタンガスを中心に、プロパンガスなどが配合されています。
これらのガスの配合やタンク構造を工夫するなどして、ガスカートリッジを気温に適応させているわけです。
一般的なガス器具は液化したガスを気化させ、空気と混合しで燃焼させます。
夏の温かい気温では特に気にすることなく安定した火力で使えます。
しかし、冬季の特に氷点下の状況ではガスの種類によっては、液化したガスが気化しにくくなり使用が困難になります。
気化温度 [℃] |
蒸気圧 [hpa(20℃)] |
燃焼エネルギー [kJ/g] |
|
ブタン(C4H10) | -0.5 | 2,213 | 42.8 |
イソブタン(C4H10) | -11.7 | 3,113 | 42.8 |
プロパン(C3H8) | -42.09 | 8,513 | 44.0 |
どのガス成分も燃焼エネルギーに大きな違いないのに、なぜ低温での燃焼や火力に差が出るのでしょうか。
その理由は蒸気圧の違いにあります。
蒸気圧が高ければカートリッジ内の圧力が高くなり、単位時間当たりに吹き出すガスの量が増すため、より強い火力になるわけです。
それと同時にガスの消費量も増加するためより早く消費されます。
外気温によってガス成分を使い分けよう
ガスの成分には「ブタン(ノルマルブタン)」「イソブタン」「プロパン」等があります。
後者のガスほど低温に強く寒い環境でも性能が落ちにくい性質を持っています。
暖かい時期なら、ガスの成分に注意せずとも問題なく使用できますが、気温が0℃を下回る環境になると液化したガスが低温のため気化できず使用できなくなる場合があります。
そのため、低い外気温でも使用できるようにプロパンガスが配合されたガスカートリッジを選択するなど、使用状況に合わせたカートリッジ選びが重要です。
使うとガス缶の温度が下がる現象「ドロップダウン」
ガスバーナーを使用していると缶が冷たくなっているのに気が付きませんか?
これは液体が気体に変わる際に周囲の熱を奪う気化熱により、ガスカートリッジの温度が下がるためです。
外気温がガスの気化温度より高く使い始めは燃焼できても、使用しているうちに外気温よりもカートリッジの温度が低くなる場合があります。
温度が下がるほど蒸気圧も低下しますので、気温が一定であってもガスボンベを使うほどに火力の低下が始まります。
・冬場の寒い時期は「イソブタン」や「プロパン」の比率が高いガスカートリッジ
・夏場などの暖かい時期は「ブタン」が主成分のノーマルなガスカートリッジ
とおぼえておきましょう。
ちなみに、イソブタンやプロパンの配合が多いカートリッジは、ノーマルなガスに比べ割高で蒸気圧も高いため夏場は使わないほうが無難です。
ガスカートリッジの互換性
メーカーは、バーナーヘッドとガスは同じメーカーのものを使用することを推奨しています。
要するに、プリムスのバーナーならプリムスのガスを、スノーピークのバーナーならスノーピークのガスを使ってくださいねということです。
では実際、ほかのメーカーのガスを使うとどうなるのでしょう?
結論から先に言うと殆どの場合はトラブルなく普通に使えます。
もちろん「絶対安全に」ということはないと思いますが、使用上は装着でき、点火・燃焼できます。
私の経験のなかでも他社のガスカートリッジを使用してトラブルや事故になったことはありません。
トラブルになったことがあるという話も聞いたことはありません。
ですが、本当のことを言えば使わないのが正しいです。
というのはガスの成分や接続部分は、メーカーにより微妙に異なっているためです。
どのメーカーも製品の設計やテストは自社製のガスカートリッジを基準に行っているはずですから、機能面や安全面からも他社のカートリッジを使用されることは好ましくないわけです。
もちろん日本国内で販売されるガス器具は製造・販売に関する非常に厳しい基準をクリアした製品です。
しかし他社のカートリッジ使用はメーカが推奨する正しい使用方法ではないため安全が担保できないということになり、使用は自己責任でということになります。
ガスカートリッジの保管方法
短期間の保管
とにかく高温を避けることが大事です。
夏場の車内や、直射日光が当たる場所に放置してはいけません。
必ず直射日光が当たらない場所に保管します。
日陰に保管していたつもりでも、時間の経過で太陽の位置が変わり日差しが当たってしまうような場所も避けましょう。
できれば、発泡スチロール箱やクーラーボックスなど温度が上昇しにくいところよいでしょう。この場合は冷却の必要はありません。
長期間の保管
高温を避けることに加え、缶の劣化を防ぐことが必要です。
ダンボール箱などに入れ湿気の少ない場所に保管しましょう。キッチンや洗面台等の水回りは保管には向きません。
また、屋外の物置も夏場に高温になりやすく、湿度も高めになり錆びやすくなるので保管には向きません。
基本的なことは缶に記載されていますので一読しておきましょう。
ガスの使用期限はどのくらいあるの?
ガスの成分は経年による変化がないので、ガス自体には消費期限はありません。
ですが、缶やバルブに使用している金属や樹脂、ゴム等は保管状態によって劣化し、使用中にガスが漏れ火災つながる可能性があります。
目安として2~3年以内に使い切ったほうがよいでしょう。
使い終わったカートリッジはどうやって捨てる?
各自治体の分別方法に従い処分します。基本的にはCB缶と同じです。
完全に使い切り、液化したガスが残っていない状態になったら缶に穴を開けたら捨てる準備は完了です。
穴をあける際は絶対に火のそばで行ってはいけません。
ちなみに自治体によってはガスカートリッジは穴を開けずに回収する場合もあります。私の住んでいる地域がそうです。
また、無料で回収しているお店が近くにあるのなら、そちらを利用してもよいでしょう。
使用済みカートリッジへのガス再充填はNG
CB缶から専用器具を介して空になったOD缶へガスを再充填する方法をよく見かけますが、実は違法です。
登山やキャンプでの使用頻度が多いと燃料代の負担は増えますし、消費量の多いガスをなるべく節約したいというお気持ちはとてもよくわかります。
ですが、安全面からも法的な観点からもガスカートリッジの充填はやめましょう。
主なメーカーのガスカートリッジ
主要な5社のガスカートリッジを紹介します。新たにバーナーヘッドを購入する際に参考にしてみてください。
Coleman(コールマン)
品名:レギュラーガス
成分:プロパン10%、ノルマルブタン90%
230g 直径11×8.8(h)cm
470g 直径11×14.8(h)cm
品名:スーパーガス
成分:プロパン10%、イソブタン90%
230g 直径11×8.8(h)cm
470g 直径11×14.8(h)cm
IWATANI PRIMUS(イワタニプリムス)
品名:ノーマルガス
ノーマルタイプガス。温暖な時期や低地での使用に適した一般用ガス。
成分:ノルマンブタン約65%、イソブタン約33%、他)
230g 直径11×8.8(h)cm
470g 直径11×14.8(h)cm
品名:ハイパワーガス
特殊繊維の内張で気化促進効果の高いテクノロジーガス。オールシーズンで使用可能。
成分:ブタンガス約75%、プロパンガス約25%
225g 直径11×8.8(h)cm
460g 直径11×14.8(h)cm
110g
品名:ウルトラガス
カタログには乗らないプリムス最強のガスカートリッジ。寒冷地、高所への遠征などの使用に適したハイグレード&ハイパワーガスです。
※気温20度以下の環境でご使用ください。
成分:ブタンガス約70%、プロパンガス約30%
容量:220g
SOTO(ソト)
品名:トリプルミックスガス
成分:ブタン、イソブタン、プロパン
容量:105g 230g 460g
snow peak(スノーピーク)
品名:ギガパワーガス イソ(銀缶シリーズ)
成分:ブタン、イソブタン
容量:110g 250g 450g
品名:ギガパワーガス プロイソ(金缶シリーズ)
成分:プロパン、イソブタン
容量:110g 220g 450g
EPIgas(イーピーアイガス)
品名:レギュラーカートリッジ(+10℃)
成分:プロパン、イソブタン
容量:230g 470g
品名:パワープラスカートリッジ(-15℃)
成分:プロパン、イソブタン
容量:100g 225g 460g
品名:エクスペディションカートリッジ(-20℃)
成分:プロパン、イソブタン
容量:190g
※上記で表記しているガスの成分は、法令、その他の理由により変更されることがあります。
状況や用途によって賢く使い分けよう!
普段から何気なく使っているだけに、知っているようで知らないことも多いガスカートリッジ。
ガスの特性を知ることで、より状況に即した賢い使いかたができるようになります。